先に結論:玉串料(たまぐしりょう)は、榊の枝に紙垂などを付けた「玉串」を神前に捧げる代わりとして、お金をお供えするときの名目です。ご祈祷や地鎮祭のような祈願の場にも、神式のお葬式や五十日祭などの霊祭、一年祭から始まる年祭にも使えるため、同じ言葉でも場面によって袋を変えます。水引は、多くのご祈祷や地鎮祭では紅白の蝶結び、弔いでは結び切りが案内されていますが、病気平癒の祈祷のように紅白の結び切りを勧める例もあり、神社や地域によって幅があります。
まずはひとつ、「へぇー」を
神社で授かるお札の中には、「日枝神社太玉串」のように社名に「太玉串(ふとたまぐし)」を添えたものがあります。神前に捧げる枝の呼び名が、私たちが受けるお札の名前にもなっているのです。
編集:へぇ助
名前の中にある「一本の枝」
玉串料という言葉は、神前に捧げる枝「玉串」に、お金を表す「料」が付いたものです。神社本庁の解説でも、玉串料や御榊料(おさかきりょう)は、枝そのものを供える代わりに納めるお供えという位置づけです。
初穂料と比べると違いがはっきりします。初穂料のもとになったのは、その年に初めて実った稲穂などの初物(初穂)でした。一方の玉串料は、榊の枝の代わりです。どちらも本来の供え物をお金に置き換えた言葉で、名前の違いは、元になった物の違いなのです。
玉串は、榊の小枝に紙垂(しで)や木綿(ゆう)・麻などを付けたものです。祭典やご祈祷の中で参列者が手に取って神前に供え、そのあと拝礼します(玉串拝礼)。参列者自身の手で捧げる点を、神社本庁は米や酒などの神饌との違いとして挙げています。
名前の由来には諸説あり、百科事典や神社本庁の解説には、神に手向ける串、御霊(みたま)の串、玉を付けた串といった説が並びます。枝の種類も全国一律ではなく、檜や櫟(いちい)で代用する土地もあると百科事典は記しています。
慶事にも弔事にも:場面別の早見表
神社本庁・全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)・各神社の案内をもとに、玉串料を使う場面を当サイトで整理しました。
| 場面 | だれが・どこへ | 表書きの例 | 袋と水引の目安 |
|---|---|---|---|
| 七五三・お宮参り・厄払いなどのご祈祷 | 申し込む人が神社の受付へ | 初穂料・玉串料・御神前など | 紅白の蝶結びが多い(病気平癒などは紅白の結び切りを勧める神社も) |
| 地鎮祭 | 施主が祭典を務める神職へ | 初穂料・玉串料(どちらでもよいとする神社がある) | 紅白の蝶結び |
| 葬儀(通夜祭・葬場祭) | 参列者が喪家へ | 御玉串料・御榊料・御霊前・御神前など | 弔事用の結び切り。色は白黒・銀・白など案内によって幅がある。蓮の花の模様が入った袋は仏式用なので避ける(神社本庁) |
| 霊祭(五十日祭・百日祭など。全互協は一年祭も霊祭の例に挙げる) | 招かれた人が喪家へ | 御玉串料・御榊料 | 弔事用の袋(地域や家の慣例を確認) |
| 年祭(一年祭・三年祭・五年祭など) | 招かれた人が遺族(施主)へ | 玉串料(神社本庁のFAQ) | 弔事用の袋(地域や家の慣例を確認) |
同じ「玉串料」でも、ご祈祷や地鎮祭とお葬式とでは、袋の選び方がほぼ逆になります。ご祈祷の中でも分かれることがあり、警固神社の案内では、病気平癒の祈祷などには紅白の結び切りが向くとされ、七五三やお宮参り、厄除けといった一般的なご祈祷の多くは紅白の蝶結びです。迷ったら、申し込む神社の案内を確かめるのが確実です。
ご祈祷で納めるときの包み方や、神社ごとの金額の示し方は初穂料ののし袋の書き方と金額の確かめ方で詳しく扱っています。
神式の弔事で包むとき、案内元で違うところ
神式のお葬式では、袋の上段を「御榊料」や「御玉串料」などとし、「御香典」は使いません。全互協の神式マナーの案内にも、この点ははっきり書かれています。仏式やキリスト教式との書き分けは香典の相場と宗教別の表書きで並べて比べられます。
表書きの言葉や水引の色は、信頼できる案内どうしでも少しずつ異なります。
| 案内元 | 表書きの例 | 水引 | そのほかの案内 |
|---|---|---|---|
| 神社本庁「初穂料・玉串料のマナー」 | 御霊前・玉串料・御榊料 | 記載なし | 玉串料・御榊料は、枝の代わりのお供えという意味 |
| 神社本庁「よくあるご質問(FAQ)」 | 玉串料・御霊前 | 白黒 | 一年を過ぎた年祭では「玉串料」と書く |
| 全互協「神式のマナーは?」 | 御玉串料・御榊料 | 銀または白の結び切り | 霊祭(五十日祭など)も御榊料・御玉串料など |
| 全互協「香典袋の表書きは『御霊前』それとも『御仏前』?」 | 御神前・御玉串料など | 白だけ・白黒・銀のどれでもよい | 「御霊前」は宗教・宗派を問わず使えるとする |
四つすべてに出てくるのは「玉串料(御玉串料)」なので、表書きに迷ったらこれを選ぶと外れが少なくなります。水引の色は案内が分かれますが、全互協の表書きのページはどれでもかまわないとしているので、結び切りの弔事用を選び、色は土地の慣習に合わせれば十分です。
結び切りが弔事に向く理由や、蝶結び・あわじ結びとの違いはのし袋の書き方と水引の結び方の比較で整理しています。
時期の区切りもあります。神社本庁の神葬祭の解説では、年祭は満1年・3年・5年・10年、以降は10年ごとに行うもので、一年祭までを「神葬祭」、それ以降を「祖霊祭」と区分するのが一般的とされます。一年祭は、年祭の最初の回であり、神葬祭の締めくくりでもある節目です。年祭に参列するときの表書きは「玉串料」とするよう、同庁のFAQは案内しています。
「香典」の位置に「玉串料」が来るわけ
仏式の「香典」と「焼香」は、どちらも「香」の字でつながっています。神式でその位置に来るのは玉串だと考えられます。拝礼で捧げる枝の名が、お金の名目にもそのまま付いているので、香典と玉串料は同じ組み立ての言葉だといえます。当サイトの見立てですが、覚え方として使えます。
それでも神式の場で「香典」と言いそうになるのは、仏式の言葉がそれだけ暮らしに根づいているからでしょう。神社本庁の解説によると、葬儀を寺が担う形は江戸時代の寺請制度のもとで定着し、神式の葬儀が広く行えるようになったのは明治に入ってからです。
玉串料をめぐるよくある誤解
誤解1:玉串料はお葬式専用の言葉
神社本庁は、神社へのお供えの表書きとして初穂料と並べて玉串料を挙げています。湊川神社も、ご祈祷ののし袋の上段には玉串料か初穂料を書くと案内しており、お祝いの場で使っても誤りではありません。
誤解2:慶事は初穂料、弔事は玉串料ときっちり分かれている
神社本庁が神社へのお供えの表書きとして例示するのは、初穂料をはじめ御神前・御供・玉串料・御榊料などです。一方、神葬祭の表書きとして同庁が挙げるのは御霊前・玉串料・御榊料で、初穂料は含まれていません。「玉串料は慶弔どちらの例にもあり、初穂料は弔事の例にない」と覚えると整理しやすいでしょう。
誤解3:地鎮祭に招かれたら玉串料を包むもの
地鎮祭の玉串料や初穂料は祭典を依頼する施主が用意するもので、産泰神社の案内でも、のし袋の下段には施主の名前を書くとしています。招かれた側については、お供えとしてお酒などを持っていくのが一般的だと、神社本庁のFAQは答えています。
もうひとつ、「へぇー」を
神式の弔事では、玉串料とは別に品物を供える道もあります。全互協の案内では、清酒がよく使われ、野菜や鮮魚は先に喪家の都合を確かめるとよいそうです。お金と品物、二つの供え方があるのです。
編集:へぇ助
玉串料のよくある疑問
Q. 「御榊料」と「玉串料」は何が違う?
A. 玉串はおもに榊の枝で作るので、どちらも「神前に捧げる枝の代わり」という同じ発想の言葉です。神社本庁はどちらも表書きの例に挙げており、使い分けの決まりは示していません。
関連記事
出典・参考
- 初穂料・玉串料のマナー|神社本庁
- 玉串の意味|神社本庁
- 神葬祭|神社本庁
- よくあるご質問(FAQ)|神社本庁
- 神式のマナーは?|一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会
- 香典袋の表書きは「御霊前」それとも「御仏前」?|一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会
- 神社に納めるお金。祈祷料の納め方とのし袋の書き方。|楠公会館(湊川神社)
- 【完全版】祈祷の初穂料・封筒の書き方と渡し方マナー解説|警固神社
- 【これで完璧!】地鎮祭ののし袋はどのように準備する?地鎮祭の初穂料の準備から、当日何をするかまで解説!|産泰神社
- 玉串(タマグシ)とは? 意味や使い方|コトバンク(デジタル大辞泉・世界大百科事典・日本大百科全書ほか)
※表書き・水引の色・包み方は、地域・神社・家庭によって異なります。本記事は資料にもとづく一般的な目安です。