招き猫の右手・左手の意味とは?色や由来をやさしく解説

先に結論:招き猫は「右手(右前足)を上げるとお金、左手を上げると人やお客を招く」と説明されるのが一般的です。ただし招き猫の愛好団体自身も、一般的にそう言われていると説明している通説で、全国共通の決まりではありません。寺社の公式案内を読むと、左右の意味を通説と同じ向きで説明する神社もあれば、右手を上げながら「お金」ではなく「縁」を招くと説明するお寺もあります。発祥とされる場所も複数あります。

まずはひとつ、「へぇー」を

招き猫の手招きのポーズは、猫が前足で顔をこすると客が来るという中国の言い伝えから来た、とする説があります。猫の身づくろいに商売繁盛の兆しを見た、という見方です。

編集:へぇ助

「右手はお金、左手は人」は誰が言っているのか

1995年に「招き猫の日(9月29日)」を定めた愛好団体・日本招猫倶楽部は、公式サイトのQ&Aで、右挙げはお金、左挙げは人やお客を招くと一般的に言われている、と答えています。今回の調査では、この割り振りをいつ・誰が言い始めたのかを示す資料は見つかりませんでした。以下では、通説と寺社の公式説明を分けて見ていきます。

発祥とされる寺社を公式案内で比べる

「招き猫発祥の地」として名前が挙がる場所は、東京だけでも複数あります。代表的な3か所と、発祥地ではないものの左右の意味を公式に説明している大阪の住吉大社を、当サイトで読み比べました。

寺社(所在地) 伝わる話の要点 招き猫との関わりの公式説明 左右の公式説明
豪徳寺(東京都世田谷区) 彦根藩主・井伊直孝が鷹狩りの帰りに門前の猫に手招きされて立ち寄り、雷雨を避けられた。その後、1633年(寛永10年)に直孝の後ろ盾で寺が再興 あり。その猫を招福猫児(まねきねこ)としてまつる招福殿がある あり。右手を上げ、小判は持たない
今戸神社(東京都台東区) 一帯は今戸焼の産地で、猫の焼き物が売られていた 神社の公式サイトには記載なし。台東区の公式観光サイトが「招き猫発祥の地」と紹介 記載なし
自性院(東京都新宿区) 文明9年(1477年)の江古田ヶ原の戦いで、道に迷った太田道灌を黒猫が寺へ導いた。猫の死後に地蔵尊を建てて供養 あり。招き猫の由来のひとつに数えられる話として紹介 記載なし
住吉大社(大阪市住吉区) 発祥の伝承ではなく、毎月の初辰(はったつ)まいりで小さな招き猫「招福猫」を授ける あり。境内の楠珺社(なんくんしゃ)で授与 あり。左手挙げは家内安全・人招き、右手挙げは商売発達・お金招き

「記載なし」は、今回読んだ公式ページにその説明が書かれていないという意味で、関係がないという意味ではありません。並べると、猫が人を寺へ導く話(豪徳寺・自性院)と、焼き物の産地の話(今戸)とでは、語られている中身の種類が違うことが分かります。発祥を1か所に決めるより、「由来の話が何本もある縁起物」と受け止めるほうが実態に近いといえます。

左右の意味を公式に説明している2つの例

住吉大社:通説と同じ向き

住吉大社の公式サイトによると、初辰まいりの招福猫は、奇数月に左手、偶数月に右手を挙げた小猫を授かります。左手は家内安全と人招き、右手は商売発達とお金招きで、通説の「右=お金、左=人」と同じ向きです。毎月1体を4年続けて48体集めると中猫と交換でき、数字の「しじゅうはち」に「始終発達」を重ねています。左右の大猫までそろえると24年がかりです。

豪徳寺:右手なのに「お金」ではなく「縁」

豪徳寺の招福猫児も右手を上げていますが、小判は持っていません。豪徳寺は、招き猫が運ぶのは福ではなく人との縁で、福を呼ぶのは本人の感謝の心だとして、小判を持たせない理由を説明しています。同じ「右手」でも、通説の「右=お金」とは意味づけがまったく違うわけです。

年代を絞り込めるのは、伝承より文献と出土品

上の発祥の話は、どれも「いつのことか」を外から確かめにくい伝承です。これに対して、紙に残った記録と地中から出た実物は、年代をかなり狭く絞り込めます。名古屋市博物館の展示にあわせた朝日マリオン・コムの解説から、当サイトで手がかりを二つに整理しました。

  • 文献(1852年ごろ):浅草で今戸焼の猫の土人形が売られ、「丸〆猫(まるしめのねこ)」と「招き猫」の二つの名で呼ばれていた様子が、浮世絵や記録に残っています。展示解説は、これを「招き猫」の語の最古の記録と位置づけています。
  • 出土品(1859年以前):新宿区内の尾張藩の屋敷跡付近から丸〆猫が見つかっています。焼けた跡があり、安政6年(1859年)の屋敷の火事を境に土に埋もれたとみられています。

つまり幕末の江戸では、招き猫はすでに浅草の土産として出回り、大名屋敷にまで届いていたことになります。今戸を発祥の地とする台東区の紹介も、この今戸焼の歴史と結びついています。

色や手の高さは「言われている」レベルの話

色や手の高さの意味は、今回読んだ寺社の公式サイトには説明がなく、愛好団体や販売店が紹介する通説です。日本招猫倶楽部のQ&Aをもとに整理しました。

見た目 一般に言われる意味 今回読んだ寺社の公式説明
白 開運招福・家内安全 記載なし
金 金運 記載なし
黒 厄除け・開運 記載なし(自性院の伝承の猫は黒猫)
赤 健康長寿 記載なし
ピンク 恋愛成就 記載なし
手が耳より上(手長) 遠くの福・大きな福 記載なし
手が耳より下 近くの福・身近な幸せ 記載なし

どれも「そう言われている」以上の根拠は確認できないため、好きな色や表情で選んでかまいません。言い伝えや語呂合わせで意味が広がるのは、ふくろうやたぬきの置物などほかの縁起物にも見られる特徴です。

よくある誤解

誤解1:左右の意味は全国共通の決まり

通説として広く知られていますが、豪徳寺のように右手上げに別の意味を込める寺もあります。授かった寺社に説明があれば、そちらが優先です。

誤解2:発祥の地はひとつに決まっている

上の表のとおり、発祥として語られる話は複数あり、1か所を正解と言い切れる根拠は今回の資料には見当たりませんでした。

誤解3:左右を間違えて飾ると縁起が悪い

日本招猫倶楽部は、招き猫の飾り方に特に決まりはないと答えています。だるまの目の入れ方が寺や産地で違うのと同じく、招き猫の左右や置き方も「習わしの幅」として知っておくと気が楽です。

もうひとつ、「へぇー」を

古い招き猫の名前「丸〆猫」の「丸〆」は、「丸々福を手に入れる」などの意味だと解説されています。福をまるごと抱え込もうという、いかにも縁起物らしい名前です。

編集:へぇ助

よくある疑問

Q. お店に置くなら左右どちらがよいですか?

A. 通説に沿うなら、お客を招くとされる左手上げが候補です。決まりではないので、好みで選んで問題ありません。

Q. 寺社で授かった招き猫は、あとでどうすればよいですか?

A. 寺社ごとに違います。豪徳寺には招福猫児の奉納所があり、決まりはないものの、願いがかなってから納める人が多いと案内しています。住吉大社の招福猫のように集めて交換する習わしもあるので、授かった寺社の案内を確認してください。

Q. 招き猫はどこで作られていますか?

A. 日本招猫倶楽部は、いまの主な産地として愛知の瀬戸市と常滑市、岐阜の多治見市、石川の金沢市・小松市などを挙げています。

出典

  • 大谿山 豪徳寺「豪徳寺と招き猫」
  • 自性院「猫地蔵」
  • 住吉大社「初辰まいり」
  • 台東区公式観光情報サイト「今戸神社(浅草名所七福神 福禄寿)」
  • 今戸神社 公式ホームページ(御祭神・御由緒)
  • 日本招猫倶楽部 公式サイト(トップページ)
  • 日本招猫倶楽部「招き猫Q&A」
  • 朝日マリオン・コム「丸〆猫(まるしめのねこ)」(美博ノート)
  • コトバンク「招き猫」(世界大百科事典(旧版))

招き猫の意味づけや由来の話は、寺社や地域によって異なります。寺社で授かった招き猫については、その寺社の案内を優先してください。

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