縁起担ぎ(験担ぎ)とは?意味の由来と語呂合わせ・言い換え・数字の例を整理

先に結論:縁起担ぎ(験担ぎ)とは、吉凶のきざしを気にかけ、よい結果につながりそうな言葉や物を選び、悪い連想を呼ぶ言葉や数を避けることです。「縁起」はもとは仏教の言葉で、寺社の由来を語る意味を経て、近世以降に吉凶の前ぶれを指すようになったとされます。中身は「よい音を足す」「悪い音を消す」「数を選ぶ」「兆しを読む」「物に託す」の型に分けられます。どれも守らなければならない決まりではなく、暮らしの中の工夫です。

まずはひとつ、「へぇー」を

お正月には「寝る」さえ言い換えました。寝るは「稲積む(いねつむ)」、起きるは「稲挙ぐる(いねあぐる)」。古語の「寝(い)ぬ」を稲に掛け、眠りまで稲の言葉にくるんだのです。

編集:へぇ助

「縁起」は仏教の言葉から始まった

縁起担ぎの「縁起」は、もともと運のよしあしとは関係のない言葉でした。何ひとつ単独では存在せず、ほかとのつながり(縁)があって初めて物事が起こる。仏教はこの見方を縁起と呼び、教えの柱にしてきました。もとの言葉はサンスクリット語のプラティートゥヤ・サムウトパーダだと、日本大百科全書は紹介しています。

やがてこの言葉は、寺や神社が建てられたいきさつや霊験(神仏のふしぎな力のしるし)を語る物語の呼び名にもなります。『信貴山縁起』『北野天神縁起』といった絵巻の題名に残る「縁起」がそれです。近世以降、この言葉が吉凶の前兆の意味でも使われるようになった背景として、精選版日本国語大辞典の語誌欄は、寺社縁起がしだいにご利益を語ることに力を入れていった流れを挙げています。

「担ぐ」について、デジタル大辞泉は縁起や迷信を気にかけるという意味を載せています。「験(げん)を担ぐ」の「験」は修行や祈祷の効き目を表す字で、物事のよしあしを告げるしるしの意味でも使われます。精選版日本国語大辞典は、「縁起」を逆さにした「ギエン」が縮まって「げん」になったとする見方も一説として紹介しています。

縁起担ぎの5つの型:呼び込むか、よけるか

「何をしているか」で分けると、縁起担ぎは意外に少ない型に収まります。呼び込むか、よけるかという軸で当サイトが整理しました。

型 向き しくみ 具体例 よく出る場面
よい音を足す 呼び込む 名前や数の読みを、めでたい言葉に重ねる 学文路駅の入場券5枚組=「ご入学」 受験・勝負
悪い音を消す よける 不吉な音の言葉を言い換える・口にしない するめ→あたりめ、婚礼で「去る」を避ける 商い・祝いの席
数を選ぶ よける 音の悪い数字を使わない 4(死)・9(苦)、車のナンバーの42・49 番号・日取り
兆しを読む 受け取る 偶然のできごとを吉凶のしるしとみる 茶柱が立つ、朝の蜘蛛 ふだんの暮らし
物に託す 呼び込む 品物に願いを込めて身近に置く 招き猫、だるま、置物 店・家・選挙

表を縦に眺めると、上の3つはどれも言葉の「音」をめぐる工夫で、足すのも消すのも同じ技の表と裏だと分かります。食卓では、おせち料理の具に込められた意味がこの音の工夫の宝庫です。

「兆しを読む」は自分では起こせない偶然を待つもので、ほかとは向きが違います。「物に託す」は、品ごとに由来の話が育ってきた型です。縁起物の置物(たぬき・ふくろう・カエル)の意味と由来で、その違いを比べています。

場面で見る縁起担ぎ:受験・祝いの席・商い

受験:お菓子と駅の入場券

「キットカット」を受験のお守りにしたのは、会社ではありませんでした。1990年代後半から受験生のあいだで広まったこの習わしを、ネスレ日本は「自然発生的」と表しています。同社が受験生の応援を始めたのは2003年からです。きっかけは、九州で「きっと勝つ」を意味する「きっと勝つとぉ」が、商品名と音が近かったことです。

和歌山県を走る南海高野線の学文路(かむろ)駅は、駅名が学問の道を思わせることから、入場券が合格祈願の品になってきました。南海電鉄の案内では、1975年に発売を始め、1980年から5枚組にしています。5枚の「ご」、入場券の「入」、学文路の「学」をつないで「ご入学」と読ませる仕掛けです。

祝いの席:言葉を控える気づかい

デジタル大辞泉は「忌み詞(いみことば)」の項で、婚礼のときに「去る」「帰る」を避ける例を挙げています。同じ辞典の「入刀」の項は、披露宴のケーキ入刀が縁起のよくない「切る」を避けた言い方だと補足しています。締めの「お開き」も、同辞典の説明では「終わる」や「閉じる」を口にしないための言葉です。

商い:「する」を「あたる」に替える

店の言葉では、「する」「すり」の音が嫌われました。精選版日本国語大辞典によると、するめを「あたりめ」、すり鉢を「当鉢(あたりばち)」と呼び替えたのは商家などで、あたりめは興行界でも使われました。店に限らずひげを剃ることを「あたる」と言うのも、改訂新版 世界大百科事典が挙げる忌み言葉の例です。

数字の縁起:4と9、そして車のナンバー

表の「数を選ぶ」型で、今も目に見える例が車のナンバープレートです。番号を指定せずに登録すると、下2桁が42と49の番号は割り当てられません。国土交通省や業界団体に取材した記事によると、取り決めに理由は書かれていないものの、42は死、49は死や苦を連想させるため外されたと受け止められています。

49を「死苦」と読む例は、日本大百科全書の「忌み数」の項目に載っています。同書はほかに、4を死、9を苦、19を重苦、33をさんざんと読む例を挙げ、19歳・33歳・42歳など厄年の年齢早見表に並ぶ年齢にも同じ見方があると述べています。

記録に見える縁起担ぎ

  1. 平安時代(927年):法令集『延喜式』に、伊勢の斎宮(伊勢神宮に仕えた皇女の御所)で口にしない言葉と言い換えが記される(精選版日本国語大辞典)。神に仕える場の言葉でした。
  2. 江戸時代後期:辞書『俚言集覧』(1797年ごろ)が「茶柱」の語を収める(精選版日本国語大辞典)。
  3. 明治時代:『東京風俗志』(1899〜1902年)に、すり鉢を当鉢と呼ぶ用例(同)。
  4. 昭和・平成:駅の入場券(1975年)やお菓子(1990年代後半から)が、受験の語呂合わせとして広まる。

あたりめや「ひげをあたる」のような店や家の言い換えを、改訂新版 世界大百科事典は、神事での言葉の慎みが暮らしにまで広がったものとして位置づけています。夜に塩を「波の花」と呼ぶように、特別な時間に限った言い換えもありました。昭和以降は企業や鉄道会社も担い手に加わり、九州の方言から始まった縁起が全国の受験生に届くようにもなりました。

縁起担ぎのよくある誤解

  • 誤解:今の忌み言葉は守るべき規則
    今の暮らしの忌み言葉は規則ではなく、その場の空気や相手の気持ちに配る習わしです。うっかり使っても、気づいたら言い直す程度で十分でしょう。
  • 誤解:ナンバーの42・49は法律で禁じられている
    割り当ての取り決めで外されているだけで、希望ナンバーなら選べます。

もうひとつ、「へぇー」を

数が悪ければ一つ足す、という知恵もありました。伊豆諸島の三宅島には、船の乗り手が13人なら藁人形を加えて14にする言い伝えが記録されており、13を嫌う感覚は西洋だけのものではないようです。

編集:へぇ助

よくある疑問

Q. 縁起担ぎと験担ぎは同じ意味ですか?

A. デジタル大辞泉は「験」の意味の一つに縁起を挙げ、用例に「験をかつぐ」を載せています。ほぼ同じ意味の言い方と考えてよいでしょう。

Q. 縁起担ぎは宗教の行いですか?

A. 「縁起」という言葉の出どころは仏教ですが、今の縁起担ぎの多くは特定の宗教の教えではなく、暮らしの中の言い伝えや言葉の工夫です。

Q. 「四の日」に引っ越しをしても大丈夫ですか?

A. 日本大百科全書は、四の日の旅立ちや引っ越しを避ける話を俗信として紹介しています。根拠のある決まりではないので、都合のよい日を選んでかまいません。気にする家族がいれば、相談して決めると安心です。

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出典・参考