護摩(護摩焚き)とは?護摩木と護摩札、お焚き上げとの違い・申し込み方を寺ごとに比較

先に結論:護摩(ごま)は、お寺で僧が炉に火を焚き、護摩木や供え物を炎に投じて本尊に祈る儀式です。真言宗・天台宗といった密教の寺と、山で修行する修験道で行われ、名前はインドの火の儀礼「ホーマ」の音に漢字を当てたものです。成田山新勝寺のように、申し込まずに堂内へ上がって一緒に祈れる寺もあります。役目を終えたお札を火に返すお焚き上げとは、目的が違います。

まずはひとつ、「へぇー」を

「胡麻の蠅(ごまのはえ)」と書くと虫の話のようですが、辞典では「護摩の灰」が古い形と見られています。ありがたい灰だと偽って売る者がいたことからの名とされ、やがて旅人を狙う盗人の呼び名にもなりました。

編集:へぇ助

参列すると目にするもの:炎、くべられる木、持ち帰る札

お寺の護摩に参列すると、目の前にあるものは大きく三つに分けられます。僧が炉で焚く炎、その炎にくべられる木、そして申し込んだ人が祈祷のあとに授かる札です。木は護摩木(ごまぎ)、札は護摩札と呼ばれます。片方は火の中へ消え、もう片方は家へ持ち帰られるという、正反対の行き先をたどる二つです。

炎と、そこへ投じる供え物には、密教ならではの見立てがあります。世界大百科事典の解説によると、焼かれる側の供え物が人の煩悩にあたり、それを焼く炎のほうが仏の智慧を表します。災いよけや福を願う祈りであると同時に、心の迷いを焼き清める営みとしても意味づけられているわけです。

くべられる木にも、役目の違いがあります。デジタル大辞泉と精選版日本国語大辞典は、供え物として投じる生木を乳木(にゅうもく)、燃料にする乾いた木を壇木(だんもく)と呼び分けています。一方、参拝する人になじみ深いのは、自分で願いを書いて納める木です。成田山新勝寺は護摩木に願いごとを書く「護摩木祈願」を参拝者に案内しています。高尾山薬王院の火渡り祭では、氏名と年齢を書いた「撫で木札」が、柴燈大護摩供の火に護摩木として投じられます。

炎の中へ消える護摩木に対して、護摩札は祈祷のあとも手元に残ります。比叡山延暦寺の根本中堂の案内では、お札に願いの内容と名前、年齢が記されます。神社のお札やお守りとどう違うか、家でのまつり方の考え方はお札とお守りの違いと、神社・お寺での扱いの差で比べています。

平安時代の記録に見える護摩と、インドから来た名前

日本の古い記録にも、護摩は登場します。精選版日本国語大辞典は早い用例として、『続日本後紀』嘉祥3年(850年)の、豊楽院(ぶらくいん)で真言宗に護摩の法を修させたという記事を挙げています。世界大百科事典(旧版)は、唐で学んだ「入唐八家」と呼ばれる僧たちが持ち帰った密教の道具の中に、護摩炉や護摩杓(しゃく)を数えています。

「護る」「摩」という字面を眺めても、火を焚く儀式だとは見当がつきにくい名前です。それもそのはずで、この2字は意味ではなく音を写すために当てられたもので、もとの言葉はサンスクリット語のhoma(ホーマ)。辞典はこの語に「焼く」「焚く」という意味を添えています。インドでは、バラモン教の祭式として行われていたものでした。

お堂の護摩・野外の柴燈護摩・お焚き上げ、3つの火を比べる

護摩はお堂の中だけのものではありません。山伏(修験者)が屋外に護摩木を高く積んで火を焚く、柴燈護摩・採燈護摩(どちらも読みは「さいとうごま」)もあります。世界大百科事典は、これを民間の火祭りの要素と混ざり合いながら修験道で営まれてきた護摩と位置づけています。ここに、火を使うところだけが共通するお焚き上げも並べて、当サイトで違いを整理しました。

比べる点 お堂の護摩 柴燈・採燈護摩 お焚き上げ
場所 本堂や護摩堂の中 境内の広場や道場など屋外 社寺や地域によって異なる。成田市観光協会の案内では、成田山新勝寺の2025年の回は奥山広場
火を扱う人 僧侶 修験者(山伏) 寺社の側
火に入れるもの 護摩木と、穀物などの供え物 高く積んだ護摩木や柴、藁 役目を終えたお札・お守り、供養を終えた塔婆など
ねらい 本尊を供養し、願いの成就を祈る 山伏の修行の場であり、家内安全などの祈願にも応える 授かった物を火に返し、感謝をささげる
参列する人のかかわり方 堂内で一緒に祈る。申し込めば護摩札を授かる(成田山新勝寺の例) 名前を書いた木札を納め、護摩木として火に投じてもらう(高尾山薬王院の例) 手元のお札などを納める
確かめた例 成田山新勝寺の毎日の御護摩 高尾山薬王院の火渡り祭、醍醐寺の柴燈護摩 成田山新勝寺の納め札お焚き上げ、聖護院門跡の水塔婆

「柴燈」と「採燈」、宗派との対応は資料によって逆

世界大百科事典は、天台系の本山派の修験では「柴灯」、真言系の当山派では「採灯」と書くのが一般的だと解説しています。ところが寺の案内では、逆の書き方が見られます。本山修験宗の総本山・聖護院門跡は節分会などの行事を「採燈大護摩供」と書き、自らの三宝院の流れを当山派修験道と呼ぶ醍醐寺は、2023年の行事案内で「柴燈護摩」と書いています。真言宗智山派の成田山新勝寺と高尾山薬王院も「柴灯」「柴燈」の字です。今回確かめた範囲では、世界大百科事典の説明と寺の表記が食い違っており、字だけで流派を見分けるのは難しいといえます。

お焚き上げと護摩が、同じ火の場で重なる日

寺の案内では、役目を終えた札や塔婆を火に納めることを「お焚き上げ」と呼んでいます。聖護院門跡は、供養を終えた水塔婆を、撥遣(はっけん)という作法を済ませてからお焚き上げすると案内しています。言葉の上でも両者は近く、デジタル大辞泉の「焚き上げ」の項には、護摩の火にかかわる意味も載っています。

両方がひとつの行事になっている例も見つかります。成田山新勝寺が出している年間行事の案内には、12月の欄に「納め不動 納め札お焚き上げ柴灯大護摩供」という行事名が載っています。日時や場所まで伝えているのは成田市観光協会の案内で、2025年は12月28日10時30分、境内の奥山広場で大小約3万体のお札を焚き上げると告知していました。祈りをささげる護摩と、授かった物を返すお焚き上げが、同じ炎の場で営まれるわけです。手元のお守りをどこへ納めるかはお守りの返し方(返す先4通りと社寺ごとの受付)にまとめています。

申し込みから札を受け取るまで、寺ごとの違い

護摩祈祷の受け方は、寺によってかなり違います。2026年10月に各寺の公式案内で確かめた内容を、当サイトで並べました。

寺(所在地・宗派) いつ行うか 申し込み方 お札の受け取り 納める額の例
成田山新勝寺(千葉・真言宗智山派) 毎日。朝護摩は4〜9月が5時30分、10〜3月が6時に始まり、日中も時刻を決めて行う 当日、境内の御護摩受付所で用紙に記入。予約は不要。来られない場合は申込用紙を現金書留で郵送 護摩(約30分)のあと、引換用紙に書かれたお渡し所で受け取る。郵送の申し込みなら御護摩札が届く(送料は別・3万円以上は無料) 5千円・1万円・2万円。特別大護摩は3万円から
比叡山延暦寺 根本中堂(滋賀・天台宗) 受付のあと、納める額に応じて3日間から7日間祈祷 お堂で受付。申込書を郵送して申し込むこともできる 祈祷のあと、お札とお守りが郵送で届く 5千円以上は木札(小)で3日間、1万円以上は木札(中)で5日間、3万円以上は木札(大)で7日間
聖護院門跡(京都・本山修験宗) 毎月28日の10時・14時、2月3日の節分会、6月7日の高祖報恩大会 寺務所の窓口か、ウェブの申し込みフォーム(ウェブは各行事の1週間前に締め切り) 郵送も選べる(送料は別) 3千円から2万円まで。額に応じて木札の大きさが8寸から2尺まで変わり、同じ額でも行事によって大きさが違う(祈祷の日数の記載はなし)

額を選ぶ仕組みは似ていても、延暦寺では木札の大きさと祈祷の日数がそろって変わり、聖護院の案内で額によって変わると書かれているのは木札の大きさです。日程や金額は改められることがあるので、申し込む前に各寺の最新の案内を確かめてください。

宗派で見ると:密教の寺と修験道、祈祷にたよらない宗派も

宗派・流れ 護摩との関わり 確かめた資料
真言宗 精選版日本国語大辞典は、真言密教の修法として説明。成田山新勝寺・高尾山薬王院(ともに智山派)では、日々の祈祷や年中行事として行う 精選版日本国語大辞典、各寺の案内
天台宗 宗派の公式サイトは、天台宗で行われる多様な修行の一つに「密教の修法」を挙げる。総本山の延暦寺根本中堂で護摩祈祷を受け付けている 天台宗、比叡山延暦寺
修験道 山伏が野外で柴燈・採燈護摩を行う。本山派の聖護院、当山派の醍醐寺ともに行事として営む 世界大百科事典、聖護院門跡、醍醐寺
浄土真宗本願寺派 宗派の「浄土真宗の教章」は、現世祈祷などにたよらず、御恩報謝の生活を送ることを掲げている 浄土真宗本願寺派

世界大百科事典は、護摩が修験道に加えて神道の場でも行われてきたと記しています。護摩との距離は宗派や流れによってさまざまで、どれが正しいということではなく、それぞれの教えの考え方の違いです。

護摩についてのよくある誤解

誤解1:目に見える火を焚くことだけが護摩

辞典には、炉に火を入れない護摩も載っています。心の中で、智慧の炎が煩悩を焼くさまを思い描く(観想する)もので、呼び名は内護摩(ないごま)です。壇で実際に火を焚く外護摩(げごま)とは対になる言葉で、日本大百科全書は、この二つを切り離せないものとして説明しています。お寺で見る炎の向こうには、心の中の火が重ねられているのです。

誤解2:申し込んだ人しか立ち会えない

護摩に「立ち会う」ことと、願いごとを込めた札を「受ける」ことは、寺の案内でも別々に扱われています。成田山新勝寺の場合、申し込みが要るのは札を受けるときで、大本堂に上がって祈祷に居合わせるだけなら申し込みはいりません。醍醐寺の2023年の柴燈護摩も、自由に参拝できると告知されていました。

誤解3:柴燈護摩と採燈護摩は、まったく別の儀式

世界大百科事典は「柴(採)灯護摩」を一つの項目にまとめており、辞典の上では、修験道の野外の護摩という同じ儀礼の書き分けとして扱われています。上で見たとおり、どちらの字を使うかの対応も資料によって揺れています。

もうひとつ、「へぇー」を

図鑑ではヌルデの名で載る山野の木に、「ごまぎ(護摩木)」という別名があります。護摩で燃やすことからの名とされ、お寺の言葉がそのまま木の呼び名にもなった一例です。

編集:へぇ助

護摩についてのよくある疑問

Q. 護摩にも種類がありますか?

A. 願いごとの種類によって、修法の名前が分かれます。世界大百科事典は息災(そくさい)・増益(ぞうやく)・敬愛(けいあい)・調伏(ちょうぶく)の4つを、日本大百科全書は鉤召(こうちょう)を加えた5つを挙げています。たとえば災いよけの息災法は白・円形・北向き(精選版日本国語大辞典)、福を願う増益法は黄色・方形・東向き(ブリタニカ国際大百科事典)と、辞典ごとに壇の色や形、向きの説明があります。

Q. 「御火加持(おひかじ)」とは何ですか?

A. 参拝者が持ってきた品を護摩の炎で清める、成田山新勝寺の作法です。同寺が例に挙げるのは鞄や財布などです。すべての寺で行われるわけではないので、ほかの寺では案内を確かめてください。

Q. 遠くて寺へ行けないときは?

A. 比叡山延暦寺の根本中堂は、申込書を送れば祈祷のあとにお札とお守りを郵送しています。聖護院門跡もウェブで申し込め、お札の郵送を選べます(送料は別)。成田山新勝寺も、来られない人向けに、申込用紙・御護摩料・送料を現金書留で送る郵送の申し込みを案内しており、祈祷した御護摩札が郵送で届きます(送料は札の種類で異なり、3万円以上は無料)。

Q. 厄除けで護摩祈祷を受けたいときは?

A. 厄年の祈願を護摩で行うお寺もあります。受ける時期や年齢の数え方は社寺ごとに案内が違うので、厄年の年齢早見表と厄払い・厄除けの違いで各社寺の案内を読み比べてから選ぶと迷いにくくなります。

Q. 宗派が違っても参列できますか?

A. 成田山新勝寺は、年間行事のよくある質問で、行事への参加に宗派はまったく関係ないと答えています。ほかの寺の行事に参列するときも、気になる点は事前に問い合わせると安心です。

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出典・参考

※護摩祈祷の日程・申し込み方法・納める額は寺院ごとに異なり、変更されることがあります。本記事は2026年10月時点の各寺の公式案内と辞典類をもとにした一般的な整理です。