除夜の鐘はなぜ108回?何時から撞くか・一般の人も撞けるかを寺ごとに比較

先に結論:除夜の鐘を108回撞く理由は、ひとつに決まっていません。人の煩悩の数とする説がもっともよく知られていますが、その数え方は辞典によっても違い、四苦八苦の語呂合わせや暦の数とする説もあります。撞き始める時刻や回数の扱い、一般の人が撞けるかどうかも寺ごとに異なり、夜10時台に僧侶だけで撞く寺、0時から撞き始める寺、昼に移した寺まであります。大晦日の風物詩として広まった背景には、ラジオ放送の影響が大きかったとみる研究者もいます。

まずはひとつ、「へぇー」を

108という鐘の数は、大晦日だけのものではありません。元代の中国でまとめられた禅寺の規則書『勅修百丈清規』は、大鐘を夜明けと夕暮れに撞くとし、その数を36打ずつ3回、計108打と定めています。

編集:へぇ助

108の出し方は一つではない:説を並べて比べる

「なぜ108回なのか」に統一された答えはなく、日本大百科全書(ニッポニカ)も、数え方には諸説あると書いています。よく紹介される説を、当サイトが「どんな計算で108にたどり着くか」という軸で並べ直しました。

説 108の組み立て方 どこで紹介されているか
煩悩説(その1) 六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)×各6種の悩み=36 → 過去・現在・未来の3つで108 デジタル大辞泉「百八煩悩」
煩悩説(その2) 六根が六塵(色・声・香・味・触・法)と関わるときの3種(辞典の表記は「苦楽・不苦・不楽」)=18 → 染・浄の2つで36 → 過去・現在・未来の3つで108 精選版 日本国語大辞典「百八煩悩」
四苦八苦の語呂合わせ 4×9+8×9=108 かこさとし『こどもの行事 しぜんと生活 12月のまき』(レファレンス協同データベース・岡山県立図書館の事例)
暦の数 12か月+二十四節気24+七十二候72=108 同上
菩薩の徳 菩薩がそなえる108の徳をたたえる 浅草寺の案内(諸説の一つとして)

表の煩悩説の2行を比べると、どちらも六根から出発して36にそろえ、最後に過去・現在・未来の3を掛けますが、途中で掛け合わせる中身が辞典ごとに違います。「煩悩はちょうど108個ある」と覚えるより、「108の読み解き方がいくつもある」と受け取るほうが、資料の書き方に沿っています。

暦の説に出てくる二十四節気は、1年を24に区切った季節の目印です。その年の日付は二十四節気の意味と一覧で確かめられます。

108は鐘だけの数でもありません。数珠にも百八の珠を基本の形とする宗派があり、宗派ごとの形の違いは数珠の持ち方と宗派ごとの違いで比べています。

撞き始めは何時?4つの寺の案内を並べる

日本大百科全書は、年が明ける前に107回、明けてから最後の1回、という分け方を慣習として挙げています。ただ、寺が出している案内を読み比べると、時刻の組み立ても、一般の人が撞けるかどうかもかなり違います。当サイトが各寺の公式案内(2026年10月時点で公開中のもの)から要点を拾いました。

寺(所在地) 撞く時間帯 撞く人 回数の扱い
知恩院(京都市・浄土宗総本山) 22時40分ごろ撞き始め、0時35分ごろ終了(2025年の案内) 17人の僧侶。参拝者は有料の見学のみ(事前申込または拝観券の購入が必要) 108回。案内は「煩悩の数」と説明
浅草寺(東京・浅草) 午前0時から、およそ40分 「百八会」の会員 数に入れない「捨て鐘」を3回打ったあと108回
本願寺鹿児島別院(鹿児島市・浄土真宗本願寺派) 23時からの除夜会(読経など)のあと 参拝者も整理券の順に撞ける 回数に決まりはないと説明
普門寺(愛知県豊橋市・高野山真言宗) 2016年から昼間に変更し、行事名も「おおみそかの鐘」に。2026年は10時〜11時30分 時間内に列へ並んだ人 時間で区切り、並んだ最後の人が撞き終えたら終了

知恩院は年をまたいで撞き、浅草寺は108回すべてを新年に撞く形です。自分で撞きたい場合は、撞き手が決まっている寺か、整理券や事前申込が要るか、回数と時間のどちらで締め切るかを確かめておくと安心です。案内は年ごとに見直されるので、出かける年の公式案内で確認してください。

いつからの行事?起源の説と、ラジオが運んだ年越しの音

起源について、日本大百科全書は中国の宋の時代から始まったとされると記します。

年越しの風景として根づいた時期については、放送との関わりがよく指摘されます。日本でラジオ放送が始まったのは1925年で、昭和の初めには大晦日の鐘の音が電波に乗るようになりました(最初の放送の年や中継した寺は、資料によって説明が分かれます)。初詣が鉄道とともに広まった経緯を研究してきた平山昇氏も、除夜の鐘はラジオの影響が大きかったとみています。平山氏は、大晦日の過ごし方が戦前期に変わったことも、定着の背景にあったとみています。

昼に撞く寺もある:時刻が動く理由

2018年の日本経済新聞は、参拝者の減少や「騒音」の苦情などを背景に、除夜の鐘を昼間に撞く寺が出てきていると報じました。表の普門寺は、参拝者の安全の確保を理由に昼へ移しています。時刻を変える理由は寺によってさまざまで、地域の事情を踏まえた各寺の判断として受け止めるのがよさそうです。

浄土真宗の寺では、回数を決めないこともある

知恩院が108を煩悩の数と案内し、浅草寺も煩悩を除くという説を諸説の一つに挙げるのに対し、浄土真宗本願寺派の本願寺鹿児島別院は、撞く回数を決めていないと説明しています。数を区切らない理由として挙げるのは、人の煩悩は数えきれないほど多いという考え方です。同別院の案内では、鐘はご利益を求める手段ではなく、自分を見つめ直す時間とされています。同じ鐘でも、寺や宗派によって込める意味づけが違うことが分かります。

除夜の鐘にまつわる、よくある誤解

  • 「107回は旧年、最後の1回は新年に撞くのが決まり」:日本大百科全書が慣習として紹介する形ですが、108回すべてを新年に撞く浅草寺や、大晦日の昼のうちに撞き終える普門寺のような寺もあります。
  • 「どの寺も108回ちょうど」:浅草寺は数に入れない捨て鐘を別に打ち、浄土真宗の別院は回数を決めていません。レファレンス協同データベースにある豊中市立図書館の回答事例でも、撞き方は地方や寺院によって一定ではないという資料が紹介されています。
  • 「宗派によって鐘の音が違う」:同じ事例は、宗派で鐘の大きさなどが決まっているわけではないと確かめたうえで、音色は鐘の形や地金の配合、置かれた環境で変わると整理しています。音の違いは、宗派よりも、一つひとつの鐘の形や材料、置かれた環境によるものです。

もうひとつ、「へぇー」を

ソウルの普信閣で1953年に始まった年明けの鐘つき行事では、鐘を33回撞きます。かつて午前4時ごろ、四つの大門が開く合図に33回鳴らしたことにちなむと、ソウル市は説明しています。

編集:へぇ助

除夜の鐘のよくある疑問

Q. 神社でも除夜の鐘は撞きますか?

A. 辞典類は、除夜の鐘を寺院が梵鐘(つり鐘)を撞く行事として説明しています。年越しに神社へ参る人も多いですが、除夜の鐘は主にお寺の行事と考えておくとよいでしょう。

Q. 年が明けてから撞く鐘も「除夜の鐘」ですか?

A. 「除夜」は大晦日の夜のことですが、デジタル大辞泉は除夜の鐘を、夜の12時をはさんで撞くものと説明しています。0時から始める寺も含め、年の変わり目に撞く鐘全体をそう呼んでいると考えてよいでしょう。

Q. 現地に行けない年は、どうすれば?

A. 知恩院のように、除夜の鐘のライブ配信を案内している寺があります。近くの寺の鐘が届く地域なら、家で耳を澄ますのも一つの過ごし方です。

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出典・参考

※108の意味、撞く時刻・回数、参加の方法は寺や宗派によって異なり、年ごとに変わることもあります。お出かけの際は各寺の最新の案内をご確認ください。本記事は資料にもとづく一般的な目安です。