初詣はいつまで?松の内の地域差・明治に広まった由来・喪中のときの考え方

先に結論:初詣に「この日を過ぎたら無効」という全国共通の期限はありません。目安として多く挙げられるのは三が日、次に松の内(1月7日までとする地域が多く、15日までとする地域もあります)で、さらに小正月や節分までを初詣と考える人もいます。行き先は神社でもお寺でもよく、身内に不幸があった年は、神社とお寺で考え方が分かれる点だけ押さえておくと安心です。

まずはひとつ、「へぇー」を

全国の初詣の人出は、かつて警察庁が毎年まとめて公表していましたが、2009年を最後に取りやめています。近年目にする人出の数字は、この全国集計とは別ものなのです。

編集:へぇ助

「いつまで」の物差しは一つではない

初詣は、法律や宗教団体の規則で日付が決まった行事ではありません。そのため人によって使う「物差し」が違います。よく聞く4つを、基準ごとに整理すると次のとおりです。

物差し 期間の目安 何を基準にした考え方か 向いている人
三が日 1月1日〜3日 正月休みの中心。多くの社寺で人出が集中しやすい にぎわいも含めて楽しみたい人
松の内 1月7日まで(15日までとする地域もある) 門松などの正月飾りを出しておく期間 「正月のうち」に済ませたい人
小正月 1月15日ごろまで 正月飾りを焚き上げる行事などがある区切り 松の内に都合がつかなかった人
節分 2月3日ごろまで 立春の前日=暦の上での季節の変わり目 混雑を避けてゆっくり参りたい人

松の内の長さには地域差があり、関東では7日まで、関西を中心に15日までとするところもあるといわれます。

社寺の側が期間を広げて案内した例もあります。2020年の冬、新型コロナウイルスの流行を受けて、横浜の伊勢山皇大神宮は三が日に人が集中しないよう節分までの分散参拝を呼びかけたと報じられました。

江戸の正月参りと、明治に生まれた「初詣」

年の初めに神仏へ祈る習慣そのものは古くからあります。大晦日から元日にかけて、夜を徹して氏神の社で過ごす「年籠り(としごもり)」という習わしがあり、辞典類はこれを元日のお参りのルーツの一つに挙げています。江戸時代の正月には、その年の縁起のよい方角にある社寺へ参る「恵方詣り」や、縁日に合わせたお参りも行われていました。

これを変えたのが鉄道だとする研究があります。歴史学者の平山昇氏によると、1872年に新橋と横浜を結ぶ鉄道が開業し、途中に川崎駅ができると、東京から川崎大師へ日帰りで参る人が増えました。方角や縁日にこだわらず、正月の休みに郊外の有名な社寺へ出かける。この新しい参り方が「初詣」と呼ばれるようになり、言葉としては1885年(明治18年)の新聞記事に見えるのが早い例とされます。

1899年には川崎大師への足として大師電気鉄道(のちの京浜急行電鉄)が開業し、並行する鉄道どうしの客の奪い合いが始まりました。どの年でも同じ文句で客を呼べる、という点で「初詣」は鉄道会社にとって便利な言葉でした。平山氏の分析では、恵方も宣伝に使われたものの、方角が年ごとに変わるため客の奪い合いの中では使いにくく、やがて方角を問わない「初詣」の呼び名が前に出てきたとされます。さらに大正期に入ると知識人層も初詣に加わり始め、東京では1920年に創建された明治神宮がその流れを後押ししたと論じられています。

初詣をめぐる、よくある誤解

  • 誤解1:大昔から変わらない伝統行事
    正月に祈る心は古くからあっても、「有名な社寺に正月に出かける」という今の形が広まったのは明治以降とする見方が研究では有力です。
  • 誤解2:初詣は神社に行くもの
    初詣の名所として発展した川崎大師も成田山も、お寺です。神社でもお寺でも、どちらでも構わないとされます。
  • 誤解3:松の内を過ぎたら、もう初詣ではない
    上の表のとおり期限は物差し次第です。その年はじめてのお参りであれば、多少遅れても気にしすぎなくてよいでしょう。

神社でもお寺でもよい、という点について

神社は神道の神をまつる場所、お寺は仏教の仏をまつる場所で、成り立ちは別物です。違いの全体像は神社とお寺の違いにまとめています。ただし初詣は、さきほどの歴史が示すとおり、神社とお寺の両方を行き先として育ってきた行事です。

注意したいのはお参りの仕方で、神社では拍手を打つのが一般的なのに対し、お寺では合掌して静かに拝むのが基本とされます。手水やお賽銭を含めた手順は参拝の作法で確認できます。

喪中・忌中の年はどう考える?

身内を亡くした年の初詣は、「忌中(きちゅう)」と「喪中(もちゅう)」を分けて考えるのが一般的です。言葉の違いは喪中と忌中の違いでくわしく扱っています。

時期 神社への初詣 お寺への初詣
忌中(神式では五十日、仏式では四十九日が目安) 控えるとされることが多い 差し支えないとされることが多い
忌明け後の喪中 参拝してよいとする案内が多い(作法に配慮を求める神社庁もある) 差し支えないとされることが多い

神社側の案内例として、北海道神社庁のQ&Aは、家族が亡くなるとおよそ五十日は神社参拝を慎み、喪が明けるまでは鳥居をくぐらずに脇の道から入り、拝殿の正面に立つことも遠慮するといった心づかいを紹介しています。こうした細かな作法は地域や神社によって違いがあります。

お寺の側では、名古屋の真宗大谷派・信興寺が、仏教は死をけがれとは考えないのでお寺へのお参りはいつでもよいと答えています。同寺は、浄土真宗にはもともと忌中という考え方がないことにも触れつつ、元日の法要「修正会(しゅしょうえ)」への参加をすすめています。迷うときは、参る予定の寺社に直接たずねるのが確実です。

人出を避けて落ち着いて参るコツ

  • 日をずらす:三が日を外し、4日以降の平日や松の内の後半を選ぶと、境内が比較的落ち着いていることが多いです。
  • 時間をずらす:元日の深夜や日中は混みやすい一方、朝の早い時間は比較的すいているといわれます。開門時間は社寺ごとに違うので事前に確認を。
  • 公式の情報を見る:2020年には鶴岡八幡宮が参道の様子をホームページで中継するなど、混み具合を発信する社寺もあります。

もうひとつ、「へぇー」を

年越しの鐘が鳴り始めたころに家を出て、0時をはさんで参ることを「二年参り」と呼ぶ地域があります。古い年と新しい年をまたいで参ることからの呼び名で、百科事典の初詣の項にも登場します。

編集:へぇ助

初詣のよくある疑問

Q. 1年に何か所も初詣に行ってもよい?

A. 複数の社寺に参ってはいけないという決まりはありません。神社とお寺を回る人もいます。ただ、古いお守りやお札は、受けた社寺に返すのが一般的とされます。

Q. 旅行先や帰省先の社寺でもよい?

A. 構わないとされます。明治の初詣自体が「郊外へのお出かけ」として広がった経緯を考えると、旅先での初詣は自然な形ともいえます。

関連記事

出典・参考

  • 平山昇「初詣の成立と展開―近代日本の都市における娯楽とナショナリズム―」論文の内容の要旨(東京大学学位論文)リンク
  • 平山昇『鉄道が変えた社寺参詣―初詣は鉄道とともに生まれ育った』交通新聞社新書、2012年(紀伊國屋書店の書誌ページ)リンク
  • コトバンク「初詣で(ハツモウデ)とは? 意味や使い方」リンク
  • JR東日本「お正月の風物詩「初詣」誕生と鉄道会社のかかわりをご紹介!」リンク
  • マイナビニュース「鉄道トリビア(286) 初詣の慣習は鉄道会社の集客競争がきっかけで広まった」リンク
  • 北海道神社庁「Q12 家族や親類に不幸があった場合、神棚のお参りはどうしたらいいですか?」リンク
  • 真宗大谷派 信興寺「喪中なので初詣は避けた方がいいですか?」リンク
  • 東京新聞「新型コロナ 初詣の「分散参拝」願う寺社 ライブカメラ、初穂料振り込み… 密回避へ知恵絞る」(2020年12月2日)リンク
  • All About「初詣はいつ行く? 何日まで? お参り期間の目安「松の内」はいつからいつまで?」リンク
  • 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「2009年の全国の三が日の初もうで参拝者数を知りたい。できれば朝日新聞の記事で確認したい。」リンク

※初詣の時期・作法・喪中の扱いは、地域や寺社、宗派、家庭によって異なります。本記事は一般的な目安と寺社の案内例をまとめたものです。