縁結びとは?「縁」と「むすび」の意味、寺社ごとの理由の違いと赤い糸の由来

先に結論:縁結びは、国語辞典では男女の縁組みが意味の筆頭です。一方「縁」の字は親子・仕事・暮らす土地まで含む人のつながりを表し、出雲大社などは恋愛以外の縁も案内しています。寺社ごとの縁結びの理由も、祭神の力や神議り、夫婦の神、結びの働きを司る神、仏の性格とさまざまです。「運命の赤い糸」の源流とされる唐の説話では、赤い縄で結ばれるのは小指ではなく足でした。

まずはひとつ、「へぇー」を

「えにし」は古いやまとことばに聞こえますが、国語辞典によれば、漢語「縁(えん)」の「ん」を「に」と書いた「えに」に、強めの「し」が付いた形。響きは和語、生まれは漢語なのです。

編集:へぇ助

「縁」と「むすび」を一語ずつほどく

「縁」は人づきあい全体を指せる言葉

仏教では、花にたとえれば種にあたるものを「因」、育つのを助ける土や水を「縁」と考えます。仏教語が暮らしに入った例には「縁起」が吉凶の意味になった流れがあります。夫婦や親子、主従の間柄をいう使い方は、仏教の意味から離れて広がったものだと精選版日本国語大辞典の語誌は説明しています。

つながる相手 言葉の例 辞典などでの扱い
家族・夫婦 血縁、良縁、離縁 夫婦や親子としての間柄(デジタル大辞泉)
住む土地 地縁 近所づきあいから地域全体まで(世界大百科事典)
職場・学校・趣味 社縁 職場・学校・同好会など、血縁と地縁の外で生まれる関係(同)
偶然の出会い 「これも何かの縁」 めぐり合わせ、関係のきっかけ(デジタル大辞泉)

神さまの名前に、なぜ「むすひ」が入るのか

東京大神宮がまつる高御産巣日神・神産巣日神は、名に「むすひ(むすび)」を含みます。この「むすひ」は、意味に合う「産」の字を当てて産霊・産巣日などと書き、ものを生み出す力を表す言葉です。ひもを結ぶ「結び」とは、百科事典では本来別の語源とされ、時代とともに重なっていきました(改訂新版 世界大百科事典)。

時期の目安 起きたこと 資料
古い読み 産霊は「ひ」を濁らず「むすひ」と読んだ 精選版日本国語大辞典
平安時代以後 「結ぶ」の意味が重ねられ、濁った「むすび」の読みも現れる 同(「産霊」の項の補注)
1684年 浮世草子に、人と人の仲を取り持つ意味の「結び」の用例 同(「結び」の項)
1701年・1770年 男女の縁を取り持つ神を指す「むすびの神」(浮世草子『傾城色三味線』)、「むすぶの神」(浄瑠璃『神霊矢口渡』)の早い用例 同(「結の神」の項)

縁結びの寺社は「なぜ縁結びか」の説明が違う

公式案内をもとに、当サイトで「理由の型」を立てて比べました。

寺社 理由の型 案内に見える説明 縁の範囲・特色
出雲大社(島根県) 祭神の力・神議り 御祭神の大国主大神について、目に見えない世界を受け持つこと、「むすび」の力で人々を導くこと、目に見えない縁を結ぶことを案内。神在祭には迎えた神々が縁結びの神議り(かむはかり)を行うとも案内 恋愛に限らず、人が関わるすべてのつながりを含むと説明
東京大神宮(東京都) 結びの働きを司る神 まつる造化の三神が万物を生み育てる「結び」の働きを司ることを、縁結びの理由に挙げる(名に「むすひ」を含むのは三神のうち2柱) 恋愛のほか、仕事の良縁を願う「仕事守」も授与
川越氷川神社(埼玉県) 夫婦・家族の神 素盞嗚尊・奇稲田姫命の夫婦と、その子とされる大己貴命、姫神の両親の夫婦神をまつる 境内の小石を麻の網に包んだ「縁結び玉」
八重垣神社(島根県) 夫婦の神 八岐大蛇退治のあと、素盞嗚尊と稲田姫命が夫婦の宮を営んだ地と伝える 鏡の池の縁占いは、恋愛や結婚以外の縁にも使えると案内
愛染堂勝鬘院(大阪府) 仏の性格 本尊の愛染明王が縁結び・恋愛成就で知られる 映画『愛染かつら』ゆかりの縁結びの霊木

神々が神無月に出雲へ集って縁を取り結ぶという言い伝えも、出雲大社は神在祭として案内し、デジタル大辞泉は「俗信」と説明しています(神無月・神在月の呼び名と語源の諸説)。

「運命の赤い糸」は、足をつなぐ赤い縄だった

源流とされるのは、唐の李復言の伝奇小説集『続玄怪録』にある「定婚店」です。今に伝わる『太平広記』巻159では、宋代に宋の始祖の名の字を避けたため、『続幽怪録』の書名で収められています(遠藤星希の論考による)。

『太平広記』の本文によれば、話は貞観2年(628年)のこと。縁談がまとまらない青年・韋固が、月明かりの下で書物を広げる老人に出会います。老人は世の婚姻の帳簿をあずかる者で、袋の赤い縄で夫婦となる二人の足をつなげば、敵どうしの家でも遠い土地でも離れられないと告げました。14年後に予言どおりの相手と結ばれ、その宿は「定婚店」と名づけられたといいます。仲人を「月下老人」と呼ぶのはこの老人にちなみ、縄のほうも「赤縄(せきじょう)」の語で『雨月物語』(1776年)などに用例があります。

足から手の小指に移った経緯は、資料でははっきりしません。太宰治の「思ひ出」(1933年発表)では、教師の話として右足の小指に見えない赤い糸が結ばれていると書かれました。辞書編纂者の飯間浩明氏は、小指が誓いの象徴とされたことと結びついたのではと推測し、広まったのは早くとも戦後とみています。

縁結びは時代とともに形を変えてきた

  • 10世紀:『古今和歌六帖』の歌に「常陸帯」の語が見えます。鹿島神宮(茨城県)にちなむ縁占いの名で、帯に男女の名を記して結び合わせる占いの形については、同神宮が2019年に掲載したPDFが古文書の記録として紹介し、現代風に改めた新春の「常陸帯祭」もあわせて載せています。
  • 江戸時代:井原西鶴『世間胸算用』(1692年)に出雲を仲人の神とする一節があり、出雲大社の御師(おし)たちの活動も、信仰を広める一因になったとみられています(改訂新版 世界大百科事典)。
  • 明治34年(1901年):前年の皇太子の御婚儀にならった神前結婚式が、日比谷大神宮(今の東京大神宮)で一般向けに初めて行われました(神社本庁)。

お参りやお守りは、どう受け止めればよいか

東京大神宮は「結守」を、御祭神の名から「ムスビ」の字をとり、自分の努力が実を結ぶよう願ったお守りと紹介しています。一方、神社本庁は神前結婚式の案内で、二人の縁を「御神縁」、つまり神さまのはからいと表しています。

縁結びのよくある誤解

誤解1:縁結びの「縁」は恋愛と結婚に限られる

そうとは言い切れません。デジタル大辞泉は意味の筆頭に男女の縁組みを置き、改訂新版 世界大百科事典は、縁は人間関係全般にわたるとしたうえで、縁結びはふつう夫婦や男女の仲を結ぶことをいうと説明します。寺社では、出雲大社が縁は男女に限らないと明言し、東京大神宮(仕事守)や八重垣神社(鏡の池の縁占い)も恋愛以外の縁を案内しています。

誤解2:縁結びの神さまは大国主命だけ

表のとおり、縁結びを託される神仏はさまざまです。道祖神(道の神)や淡島さまにも良縁の願かけが行われてきたと、改訂新版 世界大百科事典は紹介しています。

誤解3:縁切りの安井金比羅宮に恋人と参ると別れる

京都の安井金比羅宮は、碑の穴をくぐって悪縁切りと良縁結びを願う作法を案内したうえで、良縁で結ばれた夫婦やカップルが参拝しても、その縁が切られることはないと明記しています。

もうひとつ、「へぇー」を

大国主命と妻の須勢理毘売命は、歌を詠み交わして「うきゆひ」をしたと『古事記』は語ります。盃を交わして誓う意味とされ、神話の夫婦の絆にも「結ひ」の言葉が使われていたのです。

編集:へぇ助

縁結びのよくある疑問

Q. 恋人や配偶者がいても縁結びのお守りを受けてよい?

A. 川越氷川神社は紅白のえんむすび守りについて、相手のいる人は二人で一つずつ持つとよいと案内しています。

Q. 縁結びのお守りはいつ返せばよい?

A. 川越氷川神社は縁結び玉について、伴侶となる人に出会えたら二人そろってお参りし、神社へ納めるよう案内しています。一般的な目安はお守りの持ち方と返し方で整理しています。

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出典・参考

※ご利益や授与品の扱いは寺社によって異なり、案内が変わることもあります。お参りの前に各寺社の公式案内をご確認ください。