神主と宮司、住職と和尚の違いは?神社とお寺で働く人の呼び名・役職を宗派別に整理

先に結論:神社の人に「神主さん」と呼びかけても、神社側の説明に照らして間違いではありません。「神主」は神職全体を指す通称で、改まった場面での総称が「神職」です。宮司・権宮司・禰宜・権禰宜は、その神社の中での役目の名前です。巫女は資格の要らない補佐役で、神職とは分けられています。お寺では「住職」が寺の長という役目、「和尚」は宗派ごとに意味も読みも違う呼び名、「お坊さん」がふだん使いの総称です。

まずはひとつ、「へぇー」を

葱(ねぎ)を「神主」と呼ぶ言い方が、江戸時代の談義本『根無草』に見えます。神職の禰宜と同じ音にかけたもので、精選版日本国語大辞典は主に僧侶仲間の隠語として載せています。

編集:へぇ助

「神主さん」で通じる? 一つの言葉が持ついくつもの意味

神社で白い装束の人に声をかけるとき、「神主さん」でよいのか、それとも「宮司さん」が正しいのか、迷う人は少なくありません。神社自身の説明を見ると、「神主さん」で大丈夫そうです。広島県東広島市の宮崎神社は2023年の記事で、いまの「神主」は神職全員をひとまとめにした呼び方だと紹介しています。石川県金沢市の大野湊神社も、ブログでは「神主」と書きつつ、改まった言い方は「神職」だと添えています。

一方で、辞典や百科事典を見比べると、「神主」が指す人は一通りではありません。辞典によっては、最初に載る意味が役職の名前ですらないほどです(精選版日本国語大辞典)。資料に出てくる意味に当サイトで短い名前を付け、種類ごとに分けると次のようになります(上下の並びは時代の順ではありません)。

当サイトでの呼び分け 時期・場所の手がかり 資料
神職全体の通称(改まった総称は「神職」) 近世以後の俗称。現在の主な使い方 日本大百科全書・宮崎神社・大野湊神社
神社内で祭りを担う最上位の職名 古い時代の神社。社務のまとめ役(宮司)とは別の職 日本大百科全書
氏子の1年交代の当番役「一年神主」 近代まで各地/とくに近畿地方/島根県・美保神社の例 改訂新版 世界大百科事典・日本大百科全書
臨時の祭りの取りまとめ役(職名ではない) ー 精選版日本国語大辞典(最初に挙げる意味)
古典に見える例:意富多多泥古(おおたたねこ) 『古事記』崇神天皇の段。御諸山(三輪山)の神をまつる役 日本大百科全書

一年神主のような当番の神主を、古い形とみるか後から現れた形とみるかは、資料によって見方が分かれます。世界大百科事典(旧版)の「一年神主」の項は古い形とみており、百科事典マイペディアは、もとは氏族の長が務めたと推定したうえで、一年神主をその後の形として書いています。改訂新版 世界大百科事典の「神主」の項は、美保神社(島根県)の例として、一年神主が一種の神がかりの状態となってお告げ(託宣)を述べることもあると紹介し、神の代わりを務めるこうした働きのほうに神主の原点を求める説があることにも触れています。

こうして並べてみると、一本の筋道で意味が移り変わったというより、いくつもの意味が並んで使われてきた言葉だ、と当サイトではまとめています。

そのうえで、いま神社で「神主さん」と声をかけても相手の立場を取り違える心配が少ないのは、この言葉が現在は神職全体を指す呼び名になっているからです。冒頭で紹介した宮崎神社の記事に加えて、日本大百科全書も現在は神職と同じ意味で用いられると説明しており、この点では資料がそろっています。

神社とお寺が、そもそも何をまつり、どんな建物を持つ場所なのかは神社とお寺の違い(まつる対象・建物・歴史の比較)で扱っています。本記事は「人の呼び名」に話を絞ります。

宮司・権宮司・禰宜・権禰宜は「その神社の中での役目」

「宮司さん」「禰宜さん」は、神主のような通称とは違い、一つの神社の中で誰がどの役目を受け持つかを表す名前です。神社本庁の定めでは、宮司に加えて権宮司・禰宜・権禰宜の各職を置くことが認められていて(改訂新版 世界大百科事典「禰宜」)、実際にどこまで置くかは神社ごとに違います。

職名 並び 読み 補足(資料)
宮司 神社の長 ぐうじ どんな規模の神社でも1社に1人(大野湊神社。神社本庁憲章を引いて説明)
権宮司 宮司のすぐ下 ごんぐうじ 大社に置かれる職(日本大百科全書「神職」)。置くのは一部の神社だけ(大野湊神社)
禰宜 権禰宜より上、権宮司より下 ねぎ 語源は動詞「ねぐ(労ぐ)」とされる(デジタル大辞泉・精選版日本国語大辞典)
権禰宜 禰宜のすぐ下 ごんねぎ 神職として扱われるのは、この職を含めてそれより上(大野湊神社)
出仕・主典 権禰宜より下 ー こうした職を設けている神社もある(大野湊神社)

表を見ると、「権」の付く職名は、付かない職名のすぐ下に並んでいます。権宮司は宮司の次、権禰宜は禰宜の次です。この一字は神社に限りません。デジタル大辞泉は、お寺の僧侶の位(僧階)である「権僧正」も用例に挙げています。神職や僧侶の肩書きに「権」を見かけたら、「その一つ手前の位」と読むと見当がつきます。

袴の色で宮司が分かる? 職名とは別にある「階位」と「身分」

神職の格を表す物差しは職名だけではありません。資格にあたる「階位」と、等級にあたる「身分」があり、装束の色と結びつくのは身分のほうです。

まず階位です。東京の水天宮は、神事を行う神職には資格が必要だと説明しており、その資格にあたるのが階位です。國學院大學の神職課程の案内では、高いほうから浄階・明階・正階・権正階・直階の5段階があり、授与は神社本庁が行い、都道府県の神社庁が窓口になります。同大学の神職課程(神道文化学部・他学部)を修めた学生が卒業時に得るのは正階で、卒業後2年以上の在職などの条件を満たすと明階に進めます。

次に身分です。特級・一級・二級上・二級・三級・四級の6区分があり、nippon.comの装束の解説(2016年)は、正装(衣冠)の上着と袴の色や紋が区分ごとに違うことを紹介しています。

身分 正装の袍(上着) 正装の袴
特級 黒 白・藤の丸の紋
一級 黒 紫・藤の丸の紋
二級上 赤 紫・藤の丸の紋(共緯)
二級 赤 紫・紋なし
三級・四級 緑 浅黄・紋なし

袴の色を決めるのは身分だという説明は、ほかの資料にも見られます。大野湊神社(2013年)は、袴の色は職階ではなく身分によるので、見た目から職名は判断できないと書いています。愛媛県神道青年会の「知っておきたい神道知識」も、身分の区分ごとに袴の色を示しています。nippon.comの解説には、ふだんの袴を宮司・権宮司は紫、禰宜・権禰宜は浅葱と職名で紹介する箇所もあります。愛媛県神道青年会の説明では、身分を決める材料として、経歴や功績に加えて神職としての地位も挙がっています。当サイトでは、地位も判断材料に入る以上、職名と身分はある程度重なるものと考え、nippon.comが職名で袴の色を示した箇所を、おおまかな目安としての紹介と受け止めています。

三つの物差しを並べると、次のように整理できます。

物差し 表すもの 段階の名前 装束の色との関係
職名(職階) その神社での役目 宮司・権宮司・禰宜・権禰宜(出仕・主典を置く社も) 色から職名は判断できない(大野湊神社)
階位 神職の資格 浄階・明階・正階・権正階・直階 袴の色の基準として資料が挙げるのは身分のほう(大野湊神社)
身分 神職の等級 特級・一級・二級上・二級・三級・四級 袴や正装の色・紋に表れる(大野湊神社・愛媛県神道青年会・nippon.com)

巫女さんは神職? 資格の有無で分かれる立場

緋色の袴の巫女さんも神主さんの仲間だと思われがちですが、神社の説明では立場がはっきり分かれています。水天宮は、神事を執り行う神職には資格が要る一方で、神楽の舞や鈴を手にした奉仕を受け持つ巫女には資格が要らないとしています。nippon.comの解説も、巫女を神職には含めず、神職を助ける立場として紹介しています。

巫女にあたる女性を、神社ごとの名前で呼んできた例もあります。日本大百科全書は古い呼び名として、厳島神社の「内侍(ないし)」、塩竈神社の「若(わか)」、伊勢神宮の「物忌(ものいみ)」を挙げています。同じような役回りでも、神社によって独自の名前があったわけです。

「和尚さん」と「住職さん」は同じ人? お寺の呼び名の重なり方

同じ人を指していることはよくありますが、二つの言葉が表すものは別です。「住職」は寺の長という役目の名前、「和尚」は宗派によって修行の段階や師の僧を表す呼び名、「僧侶」「お坊さん」はお寺の人全体をまとめた言い方です。曹洞宗の公式FAQは、住職にも副住職にも和尚の資格が欠かせないとしています。曹洞宗の住職さんは和尚さんの資格を持つ人ですが、副住職も同じ資格を持つので、和尚さんが皆住職だとはいえません。

寺の長を指す言葉は、宗派や寺の格によってさらに枝分かれします。総本山の延暦寺の住職は「天台座主(ざす)」と呼ばれ、天台宗の公式サイトは、宗派の信仰を象徴する存在として位置づけています。静岡市の日蓮宗寺院・宗林寺の案内では、大本山や本山の住職には、敬称として「貫首(かんじゅ)」が使われます。同じ案内によると、日蓮宗の祖山とされる身延山久遠寺では、寺の長に「法主(ほっす)」の呼び名が使われます。名前は違っても、いずれもその寺の住職にあたる人です。「住職」は宗派をまたいで使える共通の言葉、各宗派の呼び名は宗派ごとの伝統を映した敬称、と整理できます。

長を支える副住職の置き方は、宗派の規則で決まります。浄土真宗本願寺派の寺院規程(第15条)では、副住職は1か寺に2人までで、任命するのは宗派の総長です。

曹洞宗で聞く「方丈さん」は、部屋の名前がそこに住む住職の呼び名に転じたものです。方丈は約3メートル四方の部屋の大きさを表す言葉で、畳に直すと四畳半ほどです。背景には、住職の居室はそれだけの広さがあれば足りるという禅宗の簡素を重んじる考え方がある、と曹洞宗の公式FAQは説明しています。

「和尚」の読みと意味:宗派によって、資料によって違う

「和尚」の二文字は、意味から選ばれた漢字ではありません。曹洞宗の公式FAQは、梵語(古代インドの言葉)の音を訳したものと説明しています。辞典ではもう一歩踏み込んで、「師」を意味する梵語がそのまま入ったのではなく、中央アジア方面でなまった形を漢字に写したとする説明も見られます(精選版日本国語大辞典など)。仏弟子として授かる名前(葬儀のときに授かることが多い)の呼び分けも気になる場合は、関連記事の戒名・法名・法号の違いをご覧ください。

読み方が宗派で違うことはよく知られていますが、どの辞典を見るかでも中身が少しずつ異なります。主な資料を当サイトで並べました。

資料 天台宗 浄土宗 禅宗 真言宗 浄土真宗
デジタル大辞泉 かしょう おしょう おしょう わじょう わじょう(「和上」と書く)
精選版日本国語大辞典 かしょう おしょう おしょう わじょう わしょう、わじょう
日本大百科全書 かしょう おしょう おしょう わじょう 記載なし
新纂浄土宗大辞典(浄土宗) かしょう かしょう おしょう 記載なし 記載なし

※新纂浄土宗大辞典は、世間一般の読みとしては「おしょう」も挙げています。

いちばん差が出るのは浄土宗の欄です。一般の辞典3種が浄土宗を「おしょう」の側に置くのに対し、浄土宗自身が編んだ新纂浄土宗大辞典は、宗内の伝統的な読みを天台宗と同じ「かしょう」としています。

読みだけでなく、「和尚」と呼ばれる条件も宗派の制度の中で決まっています。宗派の資料で確かめられた範囲を、次の表にまとめました。

宗派(資料) 「和尚」と呼ばれる人 「和上」という書き方
浄土宗(新纂浄土宗大辞典) 伝宗伝戒(加行)という修行を終えた僧侶 戒を授ける場面ではこちらで呼び分ける
曹洞宗(公式FAQ) 伝法・瑞世(ずいせ)を経た僧/「大和尚」=住職となり、お披露目と結制安居を終えた僧 使わない

二つの宗派とも、「和尚」は一定の修行や儀式を終えたことを示す呼び名で、出家した直後から使える呼び名ではない点が共通しています。違いが出るのは「和上」の扱いで、浄土宗は授戒の場面で書き分け、曹洞宗はこの書き方を使いません。

宗派ごとの呼びかけ方の例

実際にどう呼びかければよいかは、宗派の公式案内や寺院の案内に例があります。ただし、どれもその資料が示す範囲の話で、同じ宗派でも地域や寺によって違うことがあります。

資料 僧侶・住職への呼びかけ例 使わないとされる呼び方 家族・後継者の呼び名
曹洞宗(公式FAQ) 和尚さん、住職さん・ご住職、方丈さん お上人、阿闍黎 記載なし
日蓮宗(宗林寺・静岡市) 上人・お上人、ご住職、ご院首 老師(禅宗の言葉として) 若上人(親子2代で務める場合)
浄土真宗本願寺派(報恩寺・兵庫県三木市) お寺さん、住職・副住職、お坊さん。地域により御院下(ごいんげ)さん、おじゅっさん 記載なし 坊守(お寺の奥さん)、若坊守(副住職の奥さん)

このほか「おっさん」という言い方も、「おしょうさま」の音が変わったものとしてデジタル大辞泉に載っています。

呼び名にまつわる、よくある誤解

誤解1:神主さんはみんな宮司

宮司は1社に1人です。大野湊神社でブログを担当する禰宜は、テレビの取材や地鎮祭の司会の場で、宮司と思われて声をかけられた経験を書いています。同社の記事(2013年)は、全国の神職約2万人のうち宮司が約1万人といわれることを挙げ、宮司と見られるのも無理はないと受け止めています。職名を確かめずに「宮司さん」と呼ぶより、「神主さん」のほうが無難です。

誤解2:紫の袴なら宮司

上で見たとおり、袴の色の基準として資料が挙げるのは身分です。紫の袴が示すのは身分の区分で、職名ではありません。大野湊神社が書くように、見た目から職名を言い当てることはできない、と心得ておきましょう。

誤解3:巫女も神職の一人

大野湊神社の説明に沿って数えると、神職にあたるのは宮司・権宮司・禰宜・権禰宜で、出仕や主典は含まれません。巫女は資格の要らない補佐役として、水天宮でもnippon.comの解説でも神職とは分けられています。

誤解4:「和尚」はどの宗派でも「おしょう」

読みの表では、天台宗の欄には「かしょう」が、真言宗の欄には「わじょう」が載っていて、浄土宗は一般の辞典と宗派の辞典とで扱いが分かれます。日蓮宗の宗林寺のように、呼びかけの基本を「上人」とする例もあり、「和尚さん」がどこでも定番とは限りません。

誤解5:「坊主」は最初から見下した言い方

いまの「坊主」は僧侶をくだけて呼ぶ言葉ですが、字のとおり、もとは「坊のあるじ」です。坊とは寺の中にある僧の住まいのことで、精選版日本国語大辞典で最初に載っている意味も、その坊のあるじにあたる僧、つまり立場のある僧でした。僧侶一般を指す使い方は、同辞典では室町時代以後のものとされています。立場のある一人を表した言葉が、のちに僧侶全体をくだけて呼ぶ言葉にもなった例といえます。とはいえ宗林寺は、意味の上では誤りでないとしつつ、声をかけるなら「お坊さん」がよいとしています。

もうひとつ、「へぇー」を

インドの教団には見られなかった呼び名、それが住職の元になった「住持」です。改訂新版 世界大百科事典によると、禅寺の規則「清規」で長老に付けた名で、定めたのは唐の百丈懐海です。

編集:へぇ助

神社とお寺の呼び名についてのよくある疑問

Q. 職名が分からない神職には、何と声をかければいい?

A. 「神主さん」で問題ありません。神社自身が神職全体の通称として説明している言葉なので、役職を取り違える心配が少ない呼び方です。名刺などで職名が分かれば、「宮司さん」「禰宜さん」と呼び分けることもできます。

Q. お寺の人をどう呼べばいいか迷ったら?

A. 資料ごとに、これなら差し支えないとされる呼びかけが示されています。曹洞宗の公式FAQは「和尚さん」、浄土真宗本願寺派の報恩寺は「お寺さん」で十分としています。宗林寺は、迷ったらどう呼べばよいかを本人に尋ねてかまわないとしています。

Q. 神社やお寺に手紙を出すとき、宛名はどう書く?

A. 会社あての封書に「○○株式会社 御中」と書くのと同じ要領で、宛先が神社やお寺そのものなら「○○神社 御中」「○○寺 御中」とします(御中の語義はデジタル大辞泉)。宮司さんや住職さん個人に宛てるときは御中を使わず、職名と氏名のあとに「様」を付けるのが、この使い分けに沿った形です。ご祈祷などで神社に納めるお金の包み方は、初穂料ののし袋の書き方と金額の確かめ方で紹介しています。

Q. 女性の神職はいる?

A. います。水天宮では10名の女性神職が奉仕しているそうです(記事に年の表示はありません)。巫女とは別の、資格を持って神事を行う立場です。同宮の説明では、女性神職という今の仕組みは、戦後に整ったものと言われています。ただ、それより前にも、女性が神事に携わった例はあります。同宮によると、江戸時代までは一部の神社に、神事を担う女性がいました。呼び名は「物忌」「忌子」です。

Q. ふだん人のいない小さな神社にも宮司はいる?

A. 大野湊神社の説明では、複数の神社で宮司を兼ねる人が多く、自分がふだん勤める神社を「本務神社」、掛け持ち先を「兼務神社」と呼び分けます。同社の宮司は2013年当時、29もの神社で宮司を務めていました。勤め先での職は禰宜でも、掛け持ち先の神社では宮司を務める、という人もいるそうです。

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出典・参考

※呼び名や作法は、宗派・地域・神社やお寺によって異なります。本記事は資料で確かめた範囲の目安です。