先に結論:2027年の鏡開きは、多くの地域で1月11日(月・成人の日)です。ただし日付には幅があり、早い例では京都の4日、遅い例では松の内を15日までとする地方の一部の20日まであって、違いの主な理由は松の内の長さとされます。「開く」という呼び名は、縁起のよくない「割る」を避けた言いかえです(デジタル大辞泉)。鏡餅に刃物を入れること自体も忌まれてきたため(日本大百科全書)、木づちを使ったり手で小さくしたりして食べます。
まずはひとつ、「へぇー」を
二十日の読み「はつか」は、刀の「刃柄(はつか)」にも「初顔(はつかお)」にも通じます。鏡開きがまだ20日だったころは、この音の重なりも祝いの種だったと百科事典は伝えています。
編集:へぇ助
2027年の鏡開きはいつ?日付と地域の違いを一覧に
鏡餅は「松の内(正月飾りを出す期間)が明けてから」下げる土地が多く、日付が分かれる主な理由は、この松の内の長さの違いとされます。
| 日付(2027年の曜日) | 行うとされる地域 | その日の位置づけ |
|---|---|---|
| 1月4日(月) | 京都 | 三が日が明けた日(日本鏡餅組合が京都の例として紹介) |
| 1月11日(月・成人の日) | 関東をはじめ全国の多くの地域 | 松の内(7日まで)が済んだ後の日。商家の仕事始めの行事の一つ「蔵開き」も、一般にこの日とされる |
| 1月15日(金) | 松の内を15日までとする地方(関西に多いとされる) | 小正月。松の内の終わりに合わせる |
| 1月20日(水) | 同じく松の内が15日までの地方の一部 | 正月の祝い納めとされる「二十日正月」。辞典類は、鏡開きももとはこの日だったと説明 |
地域名は目安で、同じ関西でも和歌山城ではしめ縄を飾るのは7日まで、という例を地元紙が紹介しています。松の内そのものの地域差は、初詣はいつまで?松の内の地域差でも整理しています。
1月20日がなぜ11日に?将軍の命日説を資料で確かめる
百科事典類は、鏡開きはもと1月20日で、江戸時代のうちに11日へ移ったと説明しています。理由とされるのは、3代将軍徳川家光が慶安4年(1651年)4月20日に亡くなり、その忌日(命日)が20日にあたるから、という説です。ただしコトバンクで読める百科事典類は、この理由を伝聞や「説がある」という書き方にとどめ、断定はしていません。
幕府側の動きは、徳川林政史研究所の研究紀要の論文で確かめられます。将軍家の具足祝は当初20日の行事でしたが、家光の死の翌年、承応元年(1652年)からは11日の行事になり、定着したとされます。同じ論文には、忌日で日をずらした例として、4代家綱の生母が12月2日に亡くなった後、正月2日の謡初(うたいぞめ)が3日へ移された話も載っています。
一方で、町や村の鏡開きまで同じ理由で11日にそろったのかは、はっきりしません。世界大百科事典も、農家の正月行事の日付が20日から動いたのかは不明だと述べています。江戸東京博物館の図書室が公開したレファレンス事例には、命日の主を2代秀忠とする事典の記述も紹介されています。ただ秀忠が亡くなったのは寛永9年(1632年)1月24日で、20日とは合いません。事典の記述にも揺れがあります。幕府の行事では裏づけがあり、庶民の日付については一つの説明、と見るのが穏当です。
武家の鏡開き:鎧の前と鏡台の前で
女性は鏡台、男性は鎧や兜。武家の鏡餅は、供える場所が性別で分かれていたと辞典は説明しています。鎧の前の餅は具足餅、それを下げる行事は具足開きと呼ばれました。
江戸城のようすは明治30年刊の錦絵にも描かれ、東京都立図書館の解説によると、黒書院に家康が身につけた鎧の歯朶具足などを飾って具足餅を供え、拝謁した大名らにも餅などを分け与えたといいます。
「開く」と呼ぶわけと、よくある誤解
「鏡開き」という呼び名には、言葉の言いかえが隠れています。デジタル大辞泉では、この「開き」は忌み詞、つまり「割り」という縁起の悪い言葉を避けるための言いかえとされています。
では、なぜ包丁を使わないのでしょうか。資料が挙げる理由は、神前に供えた餅に刃を当てるのを避ける考え方です。日本大百科全書は、刃物で餅を切ることは忌むものだと記し、農林水産省もお供えに刃物を使わないわけを縁起の面から説明します。使う道具は木づちか素手です。
- よく聞く説明:切腹を連想させるから刃物を使わない
武家の作法と結びつけたこの説明は、行事の案内などで広く見かけます。ただ、上の辞典や農林水産省の解説が理由として示すのは供え物に刃を向けることへの忌避で、切腹には触れていません。 - 誤解:「鏡」の名の由来は一つに決まっている
丸く平らな形を昔の鏡に見立てた、という説明が広く見られる一方、女性が鏡台に供えたことと結びつける事典もあり、説明は分かれます。
割った鏡餅をおいしく、安全に食べるために
- カビが生えたら食べない:見た目がきれいでも安全とは限りません。農林水産省が紹介する顕微鏡写真では、カビの出た切り餅の、一見なにもない側にも菌糸が伸びていました。同省は、カビの部分を除いても見えないカビが残っているおそれがあるとして、カビが生えた食べ物は食べずに捨てるよう呼びかけています。焼けば大丈夫とも言えず、同省は「かび毒は熱に強いものが多く、ゆでる、焼くなどの通常の調理条件では分解しません。」と説明しています。
- 早めに食べきるか冷凍:農林水産省は「お餅はそのままにしておくと1週間ほどでカビが生えてしまいます。」としています。すぐに食べない分は粉をはらって一つずつ包み、冷凍すれば2〜3か月もつというのが同省の案内です。
- のどに詰まらせない:消費者庁が2018〜2019年の2年分を調べると、餅が原因の窒息死亡事故のうち43%が1月に起きていました。高齢の家族が食べるときは周りが気を配り、餅は小さくして、汁物でのどを湿らせ、時間をかけて噛むことを心がけましょう。
もうひとつ、「へぇー」を
お茶請けの「かき餅」は、鏡開きから生まれた名前といわれます。刃物を使わず手で欠いた鏡餅のかけらは干して保存食にもされ、その「欠き餅」が名の由来とされています。
編集:へぇ助
鏡開きのよくある疑問
Q. 地域の日に都合がつかなければ、ずらしてもいい?
A. 全国共通の決まりはありません。松の内が明けてから下げるのを目安に、家庭の都合で決めればよいでしょう。門松やしめ飾りを外す時期は正月飾りの意味と飾る期間・外す時期にまとめています。
Q. パック入りの鏡餅でも「開く」の?
A. 個包装の餅入りなら、取り出してそのまま調理できます。なお農林水産省も、下げて食べることにこそ意味があるとしています。
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出典・参考
- 鏡開き(カガミビラキ)とは? 意味や使い方|コトバンク
- 二十日正月(ハツカショウガツ)とは? 意味や使い方|コトバンク
- 幕末期尾張藩の年中行事と忌日(山本英二)|徳川林政史研究所 研究紀要
- 徳川秀忠(トクガワヒデタダ)とは? 意味や使い方|コトバンク
- 鏡餅・鏡開きの由来について。|レファレンス協同データベース(東京都江戸東京博物館 図書室)
- 千代田之御表 御鏡開ノ図(ちよだのおんおもて おかがみびらきのず)|東京都立図書館
- 鏡開き|日本鏡餅組合
- 「鏡開き」と「松の内」|和歌山新報
- 鏡もちの由来と美味しく食べるコツ|農林水産省
- 食品のかび毒に関する情報|農林水産省
- (参考情報)餅に生えたかび|農林水産省
- 年末年始、餅による窒息事故に御注意ください!|消費者庁
- 国民の祝日について|内閣府
- かき餅(かきもち)|にっぽん伝統食図鑑:農林水産省
※日付や作法は地域・家庭で異なります。本記事は資料にもとづく一般的な目安です。