おせち料理の由来とは?代表的な具の意味と重箱の詰め方

先に結論:おせちの具に込められた願いは、ばらばらに暗記するより「音の語呂合わせ」「形の見立て」「色」「育ち方・性質」の4つの型に分けると覚えやすくなります。ただし同じ具でも、資料によって説明が違うことがあります。重箱の段数や、どの段に何を入れるかも家庭や店でまちまちで、ひとつの正解があるわけではありません。名前のもとは、節目の日に神様へ供えた「節供(せっく)」の料理です。

まずはひとつ、「へぇー」を

じつはおせちには『祝い肴三種』と呼ばれる定番の縁起物があり、関東では黒豆・数の子・田作りの三つ。関西ではそのうち田作りがたたきごぼうに替わるとされ、東西で顔ぶれが少し違うんです。

編集:へぇ助

具の意味は「4つの型」で読み解ける

農林水産省の資料に載る縁起の説明を、当サイトで4つの型に整理しました。

  • 語呂型:名前の音を、めでたい言葉にかける
  • 形型:見た目を、別のめでたいものになぞらえる
  • 色型:色そのものに意味を持たせる
  • 性質型:その食材の育ち方や、使われ方にあやかる
具 込められた願い(資料の説明の要旨) 型
黒豆 まめに(まじめに・丈夫に)暮らす。黒は魔よけの色ともされる 語呂+色
昆布巻き 「よろこぶ」にかける。巻いた姿は昔の巻物(書物)の形 語呂+形
田作り(ごまめ) 田畑の肥料にされたことから豊作。「五万米」の字をあてる説明も 性質+語呂
煮しめの根菜 にんじん・れんこんなど「ん」の付く材料を「運」に通じさせるという説明がある 語呂
海老 背の丸い姿を長寿に重ねる 形
伊達巻 着物の柄、または巻物になぞらえる(資料で分かれる) 形
紅白かまぼこ 半円の断面を初日の出に見立てる。赤と白にも意味を持たせる 形+色
栗きんとん 黄金色から豊かさ・金運。栗を小判に見立てる説明も 色+形
数の子 卵の数の多さから子孫繁栄 性質
里芋 親芋のまわりに小芋がたくさん付くことから子孫繁栄 性質
れんこん 穴の向こうが見えることから、先の見通しがよい 形
ぶり 成長につれて呼び名が変わる出世魚にあやかる 性質

並べると、型を2つ重ねた具が意外に多いと分かります。黒豆は音と色、昆布巻きは音と形、栗きんとんは色と形です。

同じ具でも、資料によって説明が違う

農林水産省が公開している資料どうしでも、意味の説明が一致しない具があります。下の表は、同省の「Let’s和ごはんプロジェクト」の記事と、中国四国農政局の食育事例集に載る「“おせち料理”のいわれ」を、具ごとに突き合わせたものです(「記載なし」は、その資料にその説明が書かれていないという意味です)。

具 和ごはんプロジェクトの記事 中国四国農政局「いわれ」
伊達巻 着物の柄に似ている→衣服に困らない 巻物(書物)に似た形→学問・教養
数の子 卵の多さ→子孫繁栄 ニシンを「二親」と読み、卵の多さとあわせて子宝・子孫繁栄
海老 長生き 長寿に加え、脱皮をくり返すことから出世
昆布巻き 「よろこぶ」の語呂 「よろこぶ」に加え、「子生(こぶ)」の字をあてて子孫繁栄
紅白かまぼこ 記載なし 形が初日の出、赤は魔除け・白は清浄

どちらかが誤りというより、ひとつの具に複数の言い伝えが重なってきたと考えるのが自然です。

重箱は何段?どの段に何を入れる?

重ねられる箱を使うのは、めでたさや福を重ねる縁起かつぎだと、複数の資料が説明しています。では段ごとの中身はどうかというと、ここも資料によって分け方が違います。五段を基本として紹介する郵便局のネットショップのコラムと、近ごろ多い三段重で説明する大丸松坂屋オンラインストアの記事を並べました。

段 五段重の例(郵便局のネットショップ) 三段重の例(大丸松坂屋)
一の重 黒豆などの祝い肴 祝い肴と口取り(黒豆・栗きんとん・伊達巻など)
二の重 口取り(伊達巻など)と酢の物(紅白なますなど) 酢の物と焼き物
三の重 海の幸を中心にした焼き物 煮しめ・筑前煮などの煮物
与の重 山の幸を中心にした煮物 (三段重のため無し)
五の重 神様からの福を入れるため空けておく (三段重のため無し)

四段目を「与(よ)の重」と書くのは「四」の字を避けるためと、両資料とも説明しています。伊達巻のように同じ料理でも置く段が変わり、段数が減るほど一つの段に役割をまとめることになります。

地域で変わる「豆」のおせち

農林水産省のデータベース「うちの郷土料理」から、正月に食べられる豆料理を3つ選び、当サイトで「豆の色」「数の子との関係」「正月以外の出番」の3つの軸で比べました。

府県(主な伝承地域)/料理 使う豆(色) 数の子との関係 正月以外にも食べるか
京都府(南丹・中丹・丹後地域)/黒豆煮 丹波黒大豆(黒) 紹介されているレシピの材料には入らない 食べる。黒豆煮や豆ごはんとして一年を通して登場
福島県/豆数の子 ひやし豆=平たく黄みを帯びた青大豆の一種 料理の主役の片方。しょうゆ系の味に漬けて豆と和える 料理としては正月が基本。ただし豆そのものは、おやつとして食べてきた地域もある
長野県(北信・東信地域)/ひたし豆 青大豆(鞍掛豆を使うことも) 入れれば「数の子豆」と呼ばれ、おせち用になる 食べる。お茶請けにもなる日常のおかず

京都の黒豆煮については、同データベースに「黒く日焼けするほどマメに働けるように」という願いが紹介されています(農林水産省「うちの郷土料理」黒豆煮 京都府)。福島や長野では青大豆と数の子の組み合わせが正月の味で、同じ「豆」でも色も相棒も違います。おせちの中身に全国共通のリストはありません。

日持ちする料理が多いのはなぜ?名前の来歴も一緒に

ここまでの表に出てきた具を見直すと、小魚を炒って甘辛く絡めた田作り、砂糖でじっくり煮含める黒豆、味をしみこませた煮しめと、冷めても味が落ちにくく、作り置きのしやすい料理がそろっています。これには理由があると説明されています。中国四国農政局の「“おせち料理”のいわれ」が挙げるのは、ふだん台所に立つ人に正月くらい休んでもらうという配慮と、年神を迎えている間は火を使う煮炊きを控えるという考えの二つです。

いまでは「おせち」といえば正月料理ですが、同資料によると「御節」はもともと節日(節句)ごとに作る料理全般の名前で、数ある節日の中で正月が別格だったために、呼び名が正月料理に絞られていきました。農林水産省「行事と食文化」は、節目の日が神への供え物と人々の共食の日で、「節供」とも書かれたことを紹介しています。重箱に詰める習慣が始まった江戸時代後期には「喰積(くいつみ)」とも呼ばれた、と郵便局のネットショップのコラムは伝えています。年神様を迎える飾りについては「正月飾りの意味と飾る期間」で詳しく紹介しています。

よくある誤解

誤解1:「正式には五段(または三段)でなければいけない」

上の表のとおり、五段を基本とする資料も、三段を中心に説明する資料もあります。少人数なら一段や二段でも、縁起が損なわれるという決まりはありません。

誤解2:「どの具にも決まった意味がひとつある」

伊達巻や数の子のように、資料によって説明が分かれる具があります。願いが二つ以上重なっている具も少なくありません。

もうひとつ、「へぇー」を

お正月に使う祝い箸は、実は両端が細くなっています。片方を自分、もう片方を年神様が使い、神様と一緒におせちをいただくという「神人共食」の願いが込められているとされます。

編集:へぇ助

よくある疑問

Q. 五の重を空けておくのはなぜですか?

A. 郵便局のネットショップと大丸松坂屋の記事は、どちらも神様から授かる福を入れる場所として空けておくと説明しています。ただし、いまの家庭で五段重を使うことは少なく、守らなければならない決まりではありません。

Q. おせちはいつまで食べるものですか?

A. 何日までと全国共通で決まっているわけではなく、家庭によって食べきる時期はさまざまです。正月の締めくくりの行事は「鏡開きはいつ?やり方と由来」で紹介しています。

出典

  • 農林水産省「おせちは一年の幸を願う料理。おせちを知って作ってみよう!」(Let’s和ごはんプロジェクト)
  • 農林水産省「おせち料理に、しあわせへの祈りを詰め込んで」(おいしい和食のはなし。)
  • 中国四国農政局「食文化継承のための食育活動事例集」より「“おせち料理”のいわれ」
  • 農林水産省「行事と食文化」(田中直美・和食文化の資料)
  • 農林水産省「うちの郷土料理」黒豆煮 京都府/豆数の子 福島県/ひたし豆 長野県
  • 郵便局のネットショップ「「重箱」の意味・いわれ」
  • 大丸松坂屋オンラインストア「おせちの意味とは?重の意味も解説!」
  • 郵便局のネットショップ「「ごぼう」の意味・いわれ」

おせちの中身や詰め方、具の意味づけは地域や家庭によって異なります。迷ったときは、家族や地域で受け継がれてきたやり方を大切にしてください。

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